9999-08-09から1日間の記事一覧

第一話 1

列車の窓が世界の雑多なものを映しては過ぎ去っていった。闇のなかにときおりうっすらと浮かぶ白い山脈の翳、線路沿いに積もる雪の壁、中年の男の自分の横顔、通路を隔てた反対側のボックス席で肩を寄せ合う制服のカップル。 窓が曇ってくると、藤木はいちい…